ゲンゴロウブナ

海産物情報

ゲンゴロウブナ

概要

ゲンゴロウブナ(Carassius cuvieri)は、コイ科キンギョ属に分類される淡水魚です。フナの仲間であり、その名の通りゲンゴロウに似た丸みを帯びた体型が特徴的です。日本国内では、琵琶湖や淀川水系を中心に生息していますが、近年では人為的な移殖によって各地の湖沼や河川でも見られるようになりました。体長は通常20cm前後ですが、大きいものは30cmを超えることもあります。体色は銀白色や灰褐色で、体側には不明瞭な横縞が見られることがあります。鱗は比較的大きく、婚姻期にはオスに追い星と呼ばれる白い斑点が現れます。

ゲンゴロウブナは、植物食性が中心ですが、水生昆虫やプランクトンなども食べます。繁殖期は春から夏にかけてで、水草などに卵を産み付けます。比較的水温の変化に強く、富栄養化した水域でも生存できることから、管理された釣り場などで放流されることもあります。しかし、本来の生態系においては、在来種との競合や遺伝的な影響が懸念される場合もあります。

食用としては、フナ類の中でも比較的美味とされており、特に淡水魚特有の泥臭さが少ないとされることもあります。ただし、個体によっては泥臭さが気になる場合もあるため、調理法には工夫が必要です。近年は、釣り対象魚としても人気があり、特にヘラブナ釣りの対象となることが多いです。ヘラブナ釣りでは、その引きの強さや数釣りの楽しさから、多くの釣り人を魅了しています。

調理法

ゲンゴロウブナは、その身質を活かした調理法が数多く存在します。淡水魚特有の風味を活かしつつ、臭みを抑える工夫が重要です。

下処理

まず、ゲンゴロウブナを調理する上で最も重要なのが下処理です。釣ってからできるだけ早く締めること、そして血抜きを丁寧に行うことが泥臭さを軽減する鍵となります。釣った直後にエラと心臓を傷つけ、流水で血を十分に洗い流します。さらに、数時間から一晩、清浄な冷水に浸けておく「活け締め」や、薄い食塩水に浸けておく方法も効果的です。

鱗は硬く、取りにくい場合があるため、包丁の背などを使って丁寧に剥がします。内臓は、腹腔内に残った血合いなども含めてきれいに取り除き、流水でよく洗います。臭みが気になる場合は、調理前に日本酒や酢水に短時間漬け込むのも良いでしょう。

代表的な調理法

  • 唐揚げ: ゲンゴロウブナの唐揚げは、その骨まで食べられる手軽さから人気があります。下処理をしたゲンゴロウブナに小麦粉や片栗粉をまぶし、中温の油でカラッと揚げます。レモンを絞ったり、甘酢あんをかけたりするのもおすすめです。骨まで食べられるほどカリッと揚げることで、香ばしさと食感が楽しめます。
  • 煮付け: ゲンゴロウブナの煮付けは、甘辛い味付けがご飯によく合います。醤油、みりん、酒、砂糖、生姜などを煮汁にし、ゲンゴロウブナをじっくり煮込みます。臭みを抑えるために、生姜を多めに使うのがポイントです。フナ特有の旨味が染み込んだ煮汁も美味しくいただけます。
  • 天ぷら: ゲンゴロウブナを三枚におろし、骨を取り除いてから、衣をつけて天ぷらにするのも美味しいです。衣を薄くつけ、サクッと揚げるのがコツです。魚の旨味と衣の食感が楽しめます。
  • 味噌漬け: ゲンゴロウブナを味噌に漬け込むことで、保存性を高めつつ、独特の風味を引き出すことができます。味噌、みりん、酒、砂糖、生姜などを混ぜ合わせた味噌床に、下処理をしたゲンゴロウブナを数日間漬け込みます。焼いて食べると、味噌の風味が魚の旨味と調和して絶妙な味わいになります。
  • 塩焼き: シンプルな塩焼きも、ゲンゴロウブナの持ち味を活かす調理法です。内臓を取り除き、全体に塩を振ってしばらく置いた後、グリルやフライパンで焼きます。皮目はパリッと、身はふっくらと焼き上げるのが理想です。

その他、フナ寿司の材料としても利用されることがありますが、これは独特の発酵食品であり、地域によっては特別な調理法となります。

レビュー・口コミ

ゲンゴロウブナに関するレビューや口コミは、釣り人や淡水魚料理を楽しむ人々から寄せられています。

釣り対象魚としての評価

釣り人からは、その引きの強さや数釣りの楽しさから、非常に人気のある対象魚として評価されています。「とにかく引きが強い」、「数釣りができて楽しい」といった声が多く聞かれます。特にヘラブナ釣りの愛好家からは、「沖のポイントで掛かると、ドラグが鳴りっぱなし」、「一日中飽きさせない」といった熱のこもったレビューがあります。釣り場によっては、放流されているため、初心者でも比較的釣りやすいという点も評価されています。

一方で、「場所によっては釣果が安定しない」、「大型を狙うにはテクニックが必要」といった意見も見られます。また、釣り上げた後の処理が重要であること、「血抜きをしっかりしないと臭みが残る」というアドバイスも、経験者からはよく共有されています。

食用としての評価

食用のゲンゴロウブナについては、その評価が分かれる傾向があります。美味しく調理できれば、「淡水魚とは思えないほど上品な味」、「泥臭さがなく、旨味がしっかりしている」といった好意的な意見があります。特に、下処理を丁寧に行い、唐揚げや煮付けで食べた際の満足度は高いようです。

しかし、「やはり泥臭さが気になる」という意見も少なくありません。これは、生息環境や個体差によるものと考えられます。そのため、調理法としては、臭みをマスキングしやすい唐揚げや、甘辛い味付けの煮付け、そして味噌漬けなどが人気を集めています。レビューでは、「唐揚げにしたら骨まで食べられて美味しかった」、「煮付けがご飯泥棒」といった具体的な調理法に言及した感想が多く見られます。

また、「スーパーではあまり見かけない」という声もあり、一般の食卓に並ぶ機会は比較的少ないようです。そのため、釣り上げたものを調理する、あるいは専門店で購入するといったケースが多いようです。

総じて、ゲンゴロウブナは、釣り対象魚としてはそのゲーム性の高さから多くのファンを獲得していますが、食用としては、調理法と下処理の腕が味を大きく左右する、ある意味で「腕が試される」魚と言えるでしょう。適切に調理されれば、淡水魚ならではの旨味を堪能できるポテンシャルの高い魚です。

まとめ

ゲンゴロウブナは、その丸みを帯びた体型と力強い引きで釣り人を楽しませる一方で、適切に下処理・調理することで、淡水魚特有の旨味を味わえる魚です。泥臭さを抑えるための丁寧な下処理と、臭みをマスキングしやすい唐揚げや煮付けといった調理法が、その美味しさを最大限に引き出す鍵となります。近年では、釣り対象魚としての人気が高く、各地の湖沼で楽しまれています。食用としては、スーパーなどで見かける機会は少ないかもしれませんが、釣り上げた新鮮なものを調理することで、新たな淡水魚の魅力を発見できるでしょう。